診療科目
泌尿器科では、副腎・腎、尿管、膀脱・前立腺等の後腹膜臓器と
尿道・陰茎・睾丸・副睾丸などを扱います。
※主な疾患についての説明は以下をクリックしてください。
前立腺腫瘍(がん)について教えてください。
はい。前立腺は図ー1に示すような通常クルミ大の臓器で、前立腺液を分泌して精子を保護すると共に排尿の調節にも関わっています。近年前立腺癌の罹患数は急増し、本邦では2015年に98,400人と臓器別にみると男性癌のトップになったとのことです。(ちなみに死亡数は肺癌、胃癌、大腸癌などについで7番目です)
発病の要因はなんですか?
加齢は明らかな発病のリスクで、本邦でも50歳を過ぎると発病率が上昇し、全罹患数に対し60歳以上で95%、70歳以上で65%の割合となっています。(図ー2参照)また人種によって発病率が違い、生涯罹患率は白人の8人に1人に対し、アジア人は13人に1人となっています。(尚、一生臨床癌に至らずに終わるラテント癌があり、これにはあまり人種差がなく、日本人で25%位とされています)
人種による違いもあるのですね?
また発病については、遺伝的要因の関与があると考えられ、近親者での前立腺癌の発病数が多いほど、またその発病年齢が若いほど高いリスク因子となっているようです。
症状について教えてください。
症状については、特に早期の場合特徴的なものはなく、排尿障害で受診した中高年男性の約5%に前立腺癌が見つかったとの報告があります。近年では検診などでたまたま指摘されたPSA(前立腺特異抗原)の高値が診断のきっかけとなっていることが多い印象です。勿論進行すれば、血尿・強い排尿障害といった局所症状、骨痛・リンパ浮腫などの転移に伴う症状が現れます。PSA値・直腸診・自覚症状・画像診断などで前立腺癌を疑ったならば、短期間入院の上、経直腸的エコーガイド下前立腺針生検(図ー3参照)を行い、確定診断を得るのが一般的かと考えます。
検査の結果、癌とわかった場合はどのように進みますか?
組織検査で前立腺癌と診断がついたならば、癌の悪性度(表1参照)・癌細胞の量、また直腸診や膀胱鏡所見などを考慮しつつ、CT・シンチグラフィー・MRIなどの検査で局所浸潤や遠隔転移の有無について精査します。 (前立腺癌は特に骨やリンパ節に転移しやすい癌です)
それからすぐに治療にはいることになるのですね?
癌の悪性度が軽く、かつ癌細胞の量がわずかで、転移・浸潤がない症例では、近年すぐには治療を開始せずに、前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSAの推移等を見ながら、もし癌が進行し始めたならば初めて治療を開始する「PSA監視療法」が選択されることが多くなってきました。
その理由はなんでしょうか?
これは、日本人男性の25%ほどに生涯臨床癌に進まないで済む「潜伏癌」が見られること、また一般的には前立腺癌の進行はゆっくりしていて、病状が進み始めてから治療を開始しても十分間に合うことなどが根拠になっています。(表3参照)
そうなんですね。では転移があるなどの場合はどうでしょう。
もしすでに局所浸潤や遠隔転移がある進行癌症例では、根治手術の適応はなく、男性ホルモンを抑える内分泌療法を行うのが一般的です。(表3参照 前立腺癌は男性ホルモンを抑えることで、進行の抑制が期待できます。)
局所浸潤や遠隔転移がない癌については?
局所浸潤や遠隔転移のない”限局癌”症例(表2参照)では、根治治療を検討します。
”根治的前立腺全摘出術”が唯一の根治治療です。
全摘ですか・・・
これは図1に示すように、前立腺と精のう腺を一塊として摘出し、膀胱頚部と尿道を吻合する方法で、開腹手術・腹腔鏡手術・ロボット支援下腹腔鏡手術などがあります。根治性は非常に高いのですが、術後の尿失禁や勃起障害などの問題もあります。
年齢的にはどうでしょう。
前立腺全摘は、大きな合併症がなく年齢70歳以下くらいの方におすすめするのが一般的かと考えております。限局癌の症例でも、体力・合併症等から根治手術が難しいと考えられる場合には、前述した内分泌療法、または放射線治療をおすすめしております。(表3参照)
治療にはいくつかの選択肢があるのですね。
前立腺癌は高齢の方に多く発症し、また治療方法もいくつか選択できます。癌の根治性、治療後のQOL(生活の質)の変化、体力・合併症・年齢などを考慮して、個々の症例ごとに検討、相談して治療法を決めるのが最善かと思われます。
よくわかりました。
※上記内容は当院『季刊誌いぶりぶ』過去記事に基づきます
泌尿器科では、副腎・腎、尿管、膀脱・前立腺等の後腹膜臓器と
尿道・陰茎・睾丸・副睾丸などを扱います。
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